投資物件が与えた大きな影響

国内の民間経済主体が揃って負債返済に邁進し、支出を拡大しないという「恐慌経済」に突入するわけである。
日本は90年前後のバブル崩壊以降、すでに20年間も実質的には恐慌経済下にある。
そして今回の不動産バブル崩壊により、アメリカもまた恐慌経済に突入した可能性が高いのだ。
同国の民間経済主体の「負債減少」という現象は、少なくとも現在のアメリカが恐慌経済の「入り口」に立っていることを、明確に指し示している。
ここで、改めてアメリカの家計の負債額推移(図1-3)に注目してほしい。
20世紀末頃までは一定のペースで増え続けていたアメリカの家計の負債が、いきなり急角度で拡大を始めたのを確認できるだろう。
アメリカ経済は、20世紀末のITバブルから2001年のFRBによる利下げを経て、不動産バブルへの切り替え、いわゆるバブルのバトンタッチに成功した。
結果、1999年頃に端を発するアメリカの家計の「加速度をつけた」負債拡大は、不動産バブルが大々的に崩壊を始めるまで収まることはなかったのである。
98年境までの負債増加ペースを仮に「適切」と考えると、図1-3の通り、2009年第3四半期時点に至っても、アメリカの家計は未だに1兆ドルを超える「過剰債務」を抱えていることになる。
現時点で、アメリカにおける家計の負債減少はすでに始まっている。
これが果たしてどの水準にまで落ちるのか、今後も横ばい程度を続けるのか、あるいはある時点で底を打ち、再び負債拡大が始まるのか。
いずれの通を辿るかにより、世界経済の行く末は大きく変わってくることになる。
何しろ、アメリカの家計の消費は、フロー(GDP)の7割を上回る「世界最大の需要項目」なのだ。
家計の負債増加は、もちろんフローにおける消費拡大に繋がる。
だから、アメリカの家計の負債がこのまま減少傾向を継続すると、07年までの世界経済のエンジンであったアメリカの個人消費が、いつまで経っても回復しない状態が続くことになる。
図1-7は、03年以降のアメリカ家計(及びNPO)の金融負債に焦点を当て、グラフ化したものだ(ちなみに、図1-1の「アメリカの国家のバランスシート」は、33幸2つのアメリカ08年末時点のデータから作成したものである)。
図1-7の通り、同時点における「住宅ローン」と「その他の金融負債」の合計値は14・218兆ドルとなっている。
この14・218兆ドルが、図1-1の「家計・NPOの負債」に該当するわけだ。
両者の金額が、ピタリと一致しているのを確認してほしい。
さて、図1-7を見ると、07年までは毎年1兆ドルという驚異的なペースで増えていたアメリカ家計の負債が、08年に急ブレーキがかかったことがわかる。
実は、今回のアメリカのバランスシート不況は、必ずしも08年に起きたリーマン・ショックをきっかけに始まったわけではない。
アJ4メリカの家計の負債残高は、07年時点ですでにピークアウトしているのだ。
07年までの「世界同時好況」は、このアメリカの家計の負債増(及びその後の消費増)に支えられていた。
07年まで、アメリカの国民は毎年1兆ドル(約90兆円)の負債を増やし、それを支出に回し続けた。
すなわち「新たな需要」が世界に毎年90兆円も生まれ続けていたことになる。
世界的な金余りも手伝い、世界中が好景気に沸いたのも、無理もない話なのである。
世界同時好況の期間中、アメリカの家計は「世界経済最後の買い手」として、まさしく孤軍奮闘のような有様で、世界の需要拡大に貢献を続けてきたわけだ。
ただし、その原資は必ずしも所得の増加ではなく、負債の拡大であったわけだが。
とはいえ、我々日本人がアメリカ家計の「負債拡大」に依存した需要増を批判するなど、まさに天に唾する行為といえる。
何しろ、02年から07年までの「いざなぎ越え」の好景気は、まさにこの時期のアメリカ家計の負債増を起因とする需要拡大に支えられていたからである。
02年から07年まで、日本は国内的には投資効率が市場利子率を下回る恐慌経済下JJ2つのアメリカにありながら、何とかプラス成長を維持してきた。
その理由は「全て」直接的、もしくは間接的なアメリカ向けの輸出増なのである。
この期間、日本の輸出対GDP比率(二財の輸出÷名目)は、10%から15%台へと急伸した。
要するに日本の財の輸出が、6年間で対GDP比5%も増えたわけだが、この規模は金額に直すと、ざっと25兆円である。
25兆円もの「新たな」需要が海外に生まれた以上、日本経済がそれなりの活況を呈するようになって当たり前なのだ。
先にも記したとおり、GDPとは個人消費と民間投資、それに政府支出と純輸出の4つに細分化できる。
小泉政権下の日本は「財政健全化が必要」という理由から、公共投資(政府支出の一部)を破滅的な水準にまで削減した。
また、日本の場合、個人消費は他の支出項目に牽引されなければ、自律的に拡大することはない。
さらに、市場利子率が投資効率を下回る状況下で、民間の投資が拡大するわけがない。
この時期の日本は、個人消費、民間投資、それに政府支出までもが伸び悩む環境下にあったわけだ。
それにもかかわらず、経済成長路線を歩むことができたのは、紛れもなくアメリカの不動産バブルと、家計の負債拡大、そして個人消費の拡大のおかげなのである。
日本の輸出対GDP比率は07年にピークアウトし、08年以降は減少に転じた。
アジア向けの輸出がそこそこ伸びたところで、ク年間に1兆ドルも負債を増やしていた、アメリカ家計の需要創出パワーには及ぶべくもない。
日本が内需拡大に背を向け、外需頼みで経済成長をすることが可能な時代は、「いったんは」幕を閉じたわけだ。
「いったんは」と書いた理由は、もちろんアメリカの家計が再び負債を増やし始める時期が、この先来ないとは限らないからである。
とはいえ、現時点で「それが、いつなのか」と訊かれたところで、誰にも答えようがない。
それ以前に、現在のように世界的に需要が伸び悩む時期に、日本のような経済大国が外需頼みで成長しようと考えるなど、色々な意味で世界に対して失礼な話である。
何しろ、日本の輸出拡大は、相手国の輸入拡大に当たる。
すなわち、日本が海外への輸出を増やすと、相手国の純輸出(GDPの一項RH)が削り取られる羽目になるのだ。
日本のように経済規模が大きな国が、他国の「需要を奪い取る」ことに邁372つのアメリカというのは、いささかエゴイスティックが過ぎるのではないだろうか。
しかも現在は、世界最大の需要を持つアメリカまでもが、恐慌経済に突入しようとしている状況なのである。
改めてアメリカの状況について確認するが、同国の経済は不動産バブル崩壊を経て、ちょうど1991年前後の日本と同じ環境下にあると考えられる。
すなわち、民間の負債拡大局面が終了し、企業や家計がバランスシートの修正(要は借金返済)に乗り出し始めた状況である。
図1-8は日本の民間及び政府の負債残高推移である。
日本の91年前後の状況が、現在のアメリカと酷似していることに驚かれたのではないだろうか(図1-3参照)。
無論、恐慌経済の始まりであることは同じでも、日米両国の負債状況には幾つか差異が見られる。
例えば、日本は家計の負債が全体に占める割合は、アメリカと比べて極端に小さJβ図1-8日本の家計・企業・金融機関・政府の負債額推移(単位:兆円)二日本銀行「資金循環統計」。

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